『ツイン・ピークス』プライムビデオで見放題!

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トレモロの美しい音楽
牧歌的な町に聳える水量たっぷりの滝は
その落差により荒々しく飛沫をあげている
そんな激しい滝の流れも、やがて落ち着きを取り戻すように
穏やかに町を流れる川となっていく
川面は静かに町の景色を映し出す 
遠くに鴨が浮かんで揺れている

〜「ツインピークス オープニング映像より〜    

「世界一美しい死体」から物語は始まる

「世界一美しい死体」という触れ込みで90年代に放送され、その革新的な作風から大きな支持を得たドラマ「ツインピークス」

牧歌的な田舎町を舞台に繰り広げられるサスペンスをベースにしていますが、一部オカルト的な要素も含み、ところどころに人間臭さやユニークなキャラクターを設定するなど、ジャンルで一括りにできない作品です。

そういった多面的な要素を練り込んだ作品構成が、幅広い層に受け入れられてきた要因の一つなのでしょう。

YouTubeショート 【レコメンそじぼ】

私のYouTubeチャンネル『レコメンそじぼ』でも、本作品を紹介していますのでぜひチェックしてみてください。

YouTubeチャンネル レコメンそじぼ

今でも心に残る私の「ツインピークス」をいくつか紹介したいと思います。

1.不意に挟まれる叙情的な会話

不意に挟まれる叙情的な会話や思想は、このドラマの見どころの一つです。

善良であろうとすれば邪悪な心が闇に引き戻そうとする

世の中を良くしたいと思うたびに 邪悪な心は弱みにつけ入り人を堕落させようとする

その度に 光が遠くなる

                          〜ボビー・ブリッグス〜

これはボビーとジャコビー医師とのカウンセリングの会話の引用です。

何かを始めようとしたり、挑戦しようとする時、どこからともなく聞こえてくる自分を否定する声、そんな声に煽られて行動することを躊躇してしまったり、怖気付いて逃げてしまったりした経験を持つ人は少なくないと思います。

やはり、人間は否定することを得意とし、肯定したり褒めたりすることをあまり良しとしない生き物なのでしょうか。

普段からお調子者で、何事も損得勘定で行動するずる賢いボビー青年ですが、時々こういった核心をつくような純粋な言葉を臆することなく発するところが好きです。

2.コーヒーとドーナツがあれば幸せを噛み締められる

あまり刺激の強い飲食物は、胃の調子を崩してしまう年齢に差し掛かっていますが、この映画を見る際はコーヒーとドーナツがよくお供になっていました。

「ツインピークス」「コーヒー」「ドーナツ」で1セットなんです。

これだけあれば幸せな気分に浸れますし、これ以上の幸せは、私には贅沢かもしれません。

少し大げさかもしれませんが、そんな価値観を与えてくれた作品です

3.何度も咀嚼し味わえる

私はもともと心の内面を探ることだったり、自己理解に興味があるので、映画の登場人物のささやかなセリフにもなんらかの意味あるのではないかと、深読みをしてしまいます。

その点においても、このドラマは興味深いシーンとセリフのオンパレードなので、何度も何度も見返してしまいます。

クーパーがハリーに教える自分へのプレゼントの秘訣やアルバートの非暴力主義など、挙げ出したらキリがないのですが意味深なセリフが満載です。

そしてなぜかは分かりませんが妙に胸うたれるのが、ブリッグス少佐がボビーに親子の愛を語る場面です。

ディヴィッド・リンチの作品に共通する、不思議で懐かしい空気に包まれ、ぼうっと画面を眺めているうちに、ふわーっと別世界へ導かれていく感じがして、ものすごく感情が揺さぶられます。

4.光を探せ 光を見つめろ

でもやはり一番のお気に入りは、犯人の体からボブが出ていった後のクーパーと犯人とのやりとりです。

犯人は最期に、心の葛藤を感情むき出しで次のようなことを告白します。

「邪悪な心につけ入る隙を与えた時に、人は心を乗っ取られてしまう」

そしてクーパーは慈悲を求める犯人に対してこう伝えます。

光を探せ 光の中へ入って 光を見なさい 光の中へ 恐れないで

「光」とは善なるものです。

何か大きい壁にぶちあたった時や恐怖を感じた時、闇堕ちしたくなる時ってありませんか。

そういう時に、人は自分の無力さや不甲斐なさに落胆し、つい「光」を避けてしまいがちです。

反対に闇というものはいつでも私たちを歓迎してくれます。

自分を否定し、闇と同化することで表面上の不安は解消されたような気になりますが、心は闇に支配されたままです。

光に向かって進んで行くためにも、いずれは心の闇と向かい合い、闘わなければいけません。

自分を肯定し、いつでも自分を奮い立たせられるように闇を抜け出し、決して光を見失ってはいけないのだと、この時クーパーは言っているように思いました。

まとめ

このドラマは群像劇であり、メインテーマ以外にもお金に取り憑かれて犯罪に手を染める者や、崩壊した性道徳を弄ぶ者、コスモポリタン的なヴィジョンを暗示する者がいたりと、登場人物一人ひとりにしっかりとスポットを当てているので、観るものを飽きさせません。

一見善良そうな人間が持つおぞましい裏の顔を、クーパーだけでなく様々な住民の立場から解明していくスリルも味わえます。

デイヴィッド・リンチって、人間が裏の顔を覗かせる瞬間を映し出す天才ですよね。

人の内面の変化といった普遍的なテーマも盛り込まれたストーリーになっていますので、30年近く経った今でも色褪せず輝き続けている作品です。

最近肺気腫であることを公表したデイヴィッド・リンチ

8月からはこの「ツインピークス」オリジナル・シリーズとリミテッド・イベント・シリーズがプライムビデオで放映開始され、さらに9月には「マルホランド・ドライヴ 4Kレストア版」のリバイバル上映が決定しています。

監督の体調が気になりますが、この機会にコーヒーとドーナツを用意して、奇才デイヴィッド・リンチの世界にどっぷり浸ってみるのはいかがでしょうか。

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